■そばパンを食べる幼児 (イ族) 

 神話継承者で呪術者でもあるイ族の祭式執行者をビモと呼ぶ。美姑の核馬村に著名なビモを訪ねたとき、我々の訪問を機に村人全員に牛肉とそばパンが配られた。村人が肉を食べられる機会は、年に2、3回がせいぜい。年越し、結婚式、葬式のときなどだ。
 ここは中国辺境でもとりわけの極貧地帯だ。"我々の接待のために牛を殺すことはやめて欲しい"と何度も断ったのだが、我々が神話の取材中、向こうの広場であっという間に殺してしまっていた。あとで判ったことだが、これを機に、長老達は村人に肉を配ろうと配慮したようだ。(別れ際、牛代を支払ったところ、それは彼らにとって何年分もの年収に当たるのだが、日本の新聞代2か月分ぐらいだった)
 村の広場で行われた神話取材の間じゅう、村人が周りを取り囲んで神話を聴いている。父親の横で、昨夜牛肉とともに配られたそばパンを食べる幼児。帽子はこの地域のイ族の幼子が被るもので、頭から悪鬼を祓う役目をする。(2001.9 四川省大涼山美姑核馬村/撮影:工藤綾子)
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