■歌は止まらない　（アカ族）

　タイに移住した中国のハニ族をアカ族という。タイ少数民族の子供の中で特に人なつこくて明るいのは、アカ族の子供たちだ。
　或る家の軒下でしばらく時間を潰していたときのこと。近所の子供たちが集まってきた。押し合いへし合い、団子のように固まっては騒ぐ。団子の中身は弾けるような笑い声だ。そのうち、女の子の主導で歌が始まった。最初のうちこそこちらを意識していたのだが、そのうち歌うことに夢中になって、止まらなくなってしまった。
　２人の女の子は特に仲が良い。このあと我々に随いて村はずれまで行くときも、手を繋いで片時も離れない。そのうち歩きながら、年長の女の子がポケットから小さな飴を取り出して口に含んだ。それに気づく年下の女の子。すると、年長の子はカリッと飴を噛み割り、口から半分取り出して年下の子の掌に。赤い飴のかけらを半分ずつ口に含んだ２人は、目を合わせてにっこりと笑った。（1999.8　タイ：チェンライ県センチャルン村／撮影：工藤綾子）