■河原の少女　　　（ダイ族） 　 　西双版納の４月は、水掛け祭りで町中が賑わう。町を歩いていて目を惹くのは、なんといっても女性たちだ。ダイ族の女性は柳腰でスタイルがよく、どことなくけだるく色っぽい雰囲気を漂わせている。極彩色のドレスにカラフルな唐傘を差し、頭にはたくさんの花かんざし。同姓ながら、つい振り返ってしまう。男たちは闘鶏に興じ、川では龍船競争が繰り広げられる。町中が年に一度の大きな祭りで浮き立っている。 　一方、町から離れた村の暮らしは、どことなく沖縄の小さな島の暮らしに似ていている。突然訪れた見知らぬ私たちに、芭蕉の葉に包まれたチマキを出してくれた。沖縄の祭りの際に作られる、芭蕉の葉で包んだ餅にそっくりだ。 　村を歩くうち、大きな川のほとりに来たときだった。数人の少女たちが川遊びに夢中になっていた。このとき私の目は、或る少女に釘付けになった。水から上がった来た少女は、岸辺の岩に掛けてあったサロンをしなやかな手つきで腰に巻くと、ネックレスをくわえてふっと遙かを見つめた。何を考えているのだろう。周りのことが何もかも消えてしまったかのように、しばらく動きを止めている。少女の呼吸がこちらに伝わってくるような一瞬のひととき。その後、少女は上着を着て髪を整え、すっかり身支度を整えると、仲間たちと騒ぐ普通の少女に戻った。（1995.8　西双版納／撮影：工藤綾子）

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