■幼児を抱く子どもたち   (イ族)  

 大涼山美姑は、1998年にはまだ未解放地区だった。イ族の居住地域の中でもとりわけ貧しく、外国人が入ることを規制していたから、入るには「入境許可証」が必要だった。その後、中国辺境には未解放地区がなくなり、2000年に再訪したときはここも自由に入ることができるようになっていた。しかしその貧しさは何ら変わりなく、美姑イ族の伝統も揺るぎないものだった。印象に残るのは、子どもも大人も、誰彼の区別なく、幼児たちの面倒をよく見ることだ。電気も水道もなく、もちろん娯楽らしいものは何もない村の暮らし。家の中にはわずかな食器や手作りの簡易ベッドがあるだけだ。そんな何もない村の暮らしの中では、子どもが村という共同体を維持させていくための宝であることが強く自覚されているように見える。
 訪れた以作村でも、幼児の世話をする子どもたちがいた。神話取材の間、カメラを構える私の前に、男の子も女の子も幼児を抱きかかえて来ては、誇らしげにこちらに向ける。「ほら、ほらっ。見て」と子どもたちの目が輝く。(1998.3 四川省大涼山美姑以作村/撮影:工藤綾子)
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